老眼初心者による本や映画の話

あまり読まない本とあまり見ない映画の話

本『9回裏無死1塁でバントはするな』

9回裏無死1塁でバントはするな(祥伝社新書234)

9回裏無死1塁でバントはするな(祥伝社新書234)

 

あんまりカープが弱いので(申し遅れましたが、私、カープファンなのです)本棚にあった本を抜き出して読みました。野球の統計学・セイバーメトリクスについて書かれた入門書で、軽い読み物となっています。

セイバーメトリクスは、アメリカの野球オタクであるビル・ジェームズがはじめたゲームの統計・解析です。それまで経験論的にできあがっていた作戦のセオリーや、選手の評価基準に疑問を呈しました。日本でいちはやくその分野の論文を書いたのは鳩山由紀夫だそうです。

野球経験のない人たちが組み立てた数式をMLBの現場で採用したのは、オークランド・アスレチックスのGMビリー・ビーンでした。屈指の貧乏球団であったアスレチックスは、セイバーメトリクスでは評価されるのに一般的に成績が悪いとされる選手を安く獲得し、徹底的に得点効率の良い作戦を採用し、2002年にはMLBの最高勝率をあげました。現在はすこし戦術が変わっているそうですが、当時評価した選手は、たとえば打率が低くても選球眼がよくて出塁率が高い選手。採用した作戦のひとつは、犠牲バントでわざわざアウトをひとつ献上しないをこと、でした。

そういえば、意外に思われるかもしれませんが、松井秀喜とイチローの出塁率はほぼ同じ、時期によっては松井のほうが上でした。2010年、松井がアスレチックスに移籍したときの年俸は425万ドル、その年、マリナーズのイチローは1800万ドル……ビリー・ビーンが松井をお買い得と思ったのもわかります。

詳しくはマイケル・ルイス『マネー・ボール』をお読みください。ブラッド・ピット主演の映画も良かった。

        ★

さてさて、『9回裏無死1塁でバントはするな』です。

入門書と書いたとおり、セイバーメトリクスによる選手の評価基準や戦術について、雑学的に書かれています。

タイトルの9回裏無死1塁で犠牲バントをするのはおかしい、という根拠となっているのは次のとおりです。

「後攻チームが1点差で負けている状況での勝利確率」
 =9回無死1塁で32.1%、9回1死2塁で28.4%。

「同点の状況での後攻チームの勝利確率」
 =9回無死1塁で71.9%、9回1死2塁で69.6%。

わざわざ犠牲バントをしてまで9回1死2塁の状況をつくっても、かえって勝利確率は下がる、という理屈のようです。バントがいつも成功するわけじゃありませんし。個人的には、次の打者のその日の調子や投手との相性などもあると考えますし、そのまま延長戦も続投させたい投手が送りバントをするという状況もあるように思います。

とにかく常識を疑ってみよう、という本です。

著者によれば、「唯一、犠牲バントを成功させることによって勝利確率を上げられる状況がある。それは、同点で、9回裏ノーアウトランナー2塁という状況である」とあります。この本は電車のなかで読了しまして、帰宅すると、カープが同点9回表に、無死2塁から送りバントをし、オリックスのバッテリーエラーで勝ち越し点をあげました。9回表のことは書いてなかったけど、このバントの選択は正しかったのかな……などと考えたことでありました。

マネー・ボール〔完全版〕 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

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