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老眼初心者による本や映画の話

あまり読まない本とあまり見ない映画の話

本『永続敗戦論』

政治のことなど考えないで生きていたいのですが、そうもいかない。みなさんご存じのように、現政権が押し通そうとしている安保法制に関する議論は、まったく意見が嚙み合わずコミュニケーション不全に陥っています。詭弁とはぐらかしに満ちていて体系というものができていない。これは「言葉を守るかどうか」あるいは「正しい手続きを踏むかどうか」の戦いなのです。

高橋源一郎『ぼくらの民主主義なんだぜ』(朝日新書)は、朝日新聞に載った論壇評をまとめた一冊。連載をまとめたものだからテーマが散らばっていている印象は否めませんが、冷静でバランスのとれた本でした。非論理的で、非インタラクティブで、饒舌だけど意味のふくまれない言葉で騙されないためには、私たちが冷静で論理的でいるしかありません。

その本に触れられていたか記憶しませんが、続いて白井聡『永続敗戦論』を読みました。著者は1977年生まれの社会学者らしい。

むかしから指摘されていることですが、日本は「敗戦記念日」を「終戦記念日」と言っています。戦争できるようになる法案なのに「平和法案」といい、武器を輸出できる原則を「防衛装備移転三原則」と呼ぶのと同じく、なんらかの意図があるわけです。

白井氏はその言い換えをこんなふうに説明します。

日本はポツダム宣言を受諾し、サンフランシスコ講和条約を締結することで敗戦を受け容れたはずの日本の権力中枢は、じつは敗戦を否定している。アジア諸国に対しては、たんに戦争が終わっただけかのように振る舞う。日本の歴史認識は昔から変わりがなく、ポツダム宣言も新憲法も内心否定している。しかし事実日本は敗戦したのであるから、日本はそうした態度を見せかけるためにもアメリカに従属せざるをえないのである。《(略)敗戦を否認しているがゆえに、際限のない対米従属を続けなければならず、深い対米従属を続けている限り、敗戦を否認し続けることができる。かかる状況を私は「永続敗戦」と呼ぶ》(48p.)

本書はこの考えを基本にして、領土問題、アメリカやアジアとの関係、天皇問題、戦争責任、靖國問題、さらに日本が何をすべきか……などを論じています。非常に鋭い指摘です。2013年3月に刊行された本ですが、2年以上経って歴史修正主義の擡頭がいちじるしくなり、著者の主張がますます具体的になってきました。

先日、山本太郎議員が、すこしまえに志位和夫議員が、それぞれ国会において日本の対米追従について質問しました。安保法制がアメリカの要請によるものではないか、との指摘を、首相や防衛相は完全に否定できなかった、と私には見えました。

私は改憲やむなし派です。けれど、いまの解釈改憲に与することはできません。互いに理解できる言葉と論理とで話しあう社会をつくるために、無力感と戦いながら頭をフル回転させなければならない。もう少し勉強します。

永続敗戦論――戦後日本の核心 (atプラス叢書04)

永続敗戦論――戦後日本の核心 (atプラス叢書04)

 
ぼくらの民主主義なんだぜ (朝日新書)

ぼくらの民主主義なんだぜ (朝日新書)