老眼初心者による本や映画の話

あまり読まない本とあまり見ない映画の話

本『「靖国神社」問答』

30年くらい前の話。
友人と喫茶店で靖国問題について雑談していると、総理大臣による靖国神社公式参拝に賛成するやつがいました。リベラルな考えの持ち主でしたが、「日本のために命を落とした英霊に、首相が頭を下げるのはいいことだと思う。靖国参拝に反対する人の気持ちがわからない」と力説するのです。ずっと聞いたあと、「憲法違反でも、そう思うか」と言うと、彼は「ん〜」と考え込んでしまいました。
立憲主義が揺らいでいるかもしれないと思ったのはこのときが初めてです。純粋に善意の気持ちからかもしれないけど、一般の国民が憲法をないがしろにするようになっていたのです。解釈改憲などというイカサマがまかりとおるのもむべなるかな。

      ◎

山中恒『「靖国神社」問答』(小学館文庫)を読みました。
政治や外交としての靖国問題に関しては以前もよく読みました。神社としての靖国に関しては、小松和彦『神になった人びと』(知恵の森文庫)で読みました。戦争のあと、祟りを怖れて、相手も一緒に祀ってきた日本ですが、靖国は戦勝国側だけの戦没者を祀る歴史的には型破りな神社であることや、戦没者はみな合わさって一つの柱になっているため、分祀できないことなどを学びました。靖国神社は明治2年の建立です。
山中恒が書いた『「靖国神社」問答』は、いろんな角度から総合的に靖国神社を学べる1冊でした。日本の近現代史の一側面が理解できるので中高生に読んでほしい。
明治以降、現人神=天皇と神道が日本の中心に位置づけられます。戦前・戦中の子供は大日本帝国や天皇に敵対する相手と戦うことは神の意思にかなった正義であると教え込まれ、殉国の士を靖国の神にすることで誰も戦争に反対できなくなるようにしたのだ、と著者は書きます。つまり靖国神社は国家的な戦争の装置なのです。
八紘一宇の精神でアジアに勢力を伸ばそうとした、明治以降の日本の歴史を丁寧に振り返りながら、靖国神社の果たした役割を俯瞰しています。白井聡の解説も良かった。

      ◎

今年の正月、神社が憲法改正の書名を集めていたと報じられ、ドキッとしました。いまの保守は、社会を戦前に戻したいと言われます。戦後、政教分離を徹底され格下げされた神社も、憲法改正をして国家神道に戻りたいんでしょう。私は靖国は以前から敬遠していますが、神社一般とも距離を置くことにしました。どうしても神様が欲しくなったら、拾ってきた石を飾り、神様として崇拝することにします。

「靖国神社」問答 (小学館文庫)

「靖国神社」問答 (小学館文庫)

 
神になった人びと (知恵の森文庫)

神になった人びと (知恵の森文庫)