老眼初心者による本や映画の話

あまり読まない本とあまり見ない映画の話

映画『シン・ゴジラ』(ネタバレ?)

 映画を観ても本を読んでもブログを更新していなかった。
 これを期に少しアップするようにします。

        ☆

 私はこどものころゴジラは好きでした。広島に住んでいたから実物を見たことはなかったけど、東京タワーや大阪城が壊されることにワクワクしました。
 しかし小学生向け雑誌で、過去にゴジラが「シェー」をしたと知り、夢から醒めました。自分だって子供のくせに、ゴジラは子供だましだとバカにしてしまったのです。
 今は、テレビでやっていれば、第一作『ゴジラ』などは観ます。子供向け娯楽映画ではない傑作です。モノクロだからいいのかもしれません。夜の暗がりにゴジラの目と、放射能の光線だけが光るシーンは美しい。

 さて、そんな私が映画『シン・ゴジラ』を見ました。
 SNSを見ると、友人や友人の友人が、2度見た3度見た、とありますから、それなりに期待したのでした。ラジオ等で「ネタバレにならない程度に」という前置きで聞いていた情報は、福島原発事故のあたふたした対応を描いたものだとか、日米安保体制を皮肉ったものだとかいうもの。「ゴジラを《駆除》するために原爆を投下するといったアメリカに、日本は追い詰められる」という話も聞いていました。
 それらを聞いて、勝手にストーリーを妄想していたんですね。
 最初に結論を書けば「期待ほどではなかった。まあまあくらいかなあ」というのが率直な印象です。

  (以下ネタバレふくむかも。注意。)

 自分で勝手に膨らませた期待を、映画は越えてくれなかったのでした。映像はそれなりによかったと思います。しかし20年前ならともかく、いまどきCG観て驚くようなこともないし……。私の場合、巷間漏れ聞く「セリフが多い」「人間ドラマがない」という、よく聞く批判はしません。そんな映画もあっていいからです。
『シン・ゴジラ』の前半は、自衛隊出動にいたるまでの法解釈や、日本がアメリカに隷属していることを描いた点で新しいのでしょう。おもしろかった。ただ、海外の人が見たら確かにつまらんかもね。
 しかし、現実を見据えた前半のパロディは、その後、「こうだったらいいのにね」という理想を描くファンタジーになります。
 だから左の人たちは前半を見て反権力の映画だと評し、右な人たちは後半を見て日本礼賛の映画だというかもしれません(映画のなかで、日本はほとんどアメポチですけど、いまの自称保守はアメリカ従属を是とするからいいんでしょう)。
 私はもしかして徹底的に日本が破壊されるのを期待していたのかもなあ。『日本沈没』並みに。

 日本に襲来したのが宇宙人ではなくゴジラである意味はなんでしょう。 
 ゴジラは可視化された放射能です。つまり福島原発を想起させます。
 前述のとおり、前半は福島の原発による政府の対応をカリカチュアライズしています。やたらと「想定外」を発する大臣がいました。
 誰かが指摘していますが、終戦の決断から玉音放送にいたるシリアス劇にコメディの要素を加えた、岡本喜八『日本のいちばん長い日』にも通じているといえましょう。マスコミや国民の視点をほとんど省略している点も共通しています。もっとも『日本のいちばん長い日』の場合、あの日、大本営発表しか報じないマスコミや、敗戦の噂さえ耳にしてなかった庶民を描く必要性は低かったといえますけど。
 2度目の上陸で東京は壊滅的な被害を負います。上陸した地点は異なりますが、結局最初と同じようなコースをたどる理由がわかりません。馴染みのある場所が破壊されている点は、私にとっては面白かった。
 ただ、人間を脅かす存在であるゴジラを生みだしたのは誰なのか? なぜ日本を襲撃したか? 国家とは何か?……といったことまで考えさせる深い映画ではなかった。前述のとおり、後半は、進化した害獣を知恵と勇気で駆除するお話になるからです。
 制御不能な放射能=ゴジラに対し、知恵と勇気で立ち向かう勇敢な日本人。縦割り行政とか責任をとりたくない政治家たちとか外交能力のない大臣たちといった、合うはずのない歯車がカチカチはまって機能し始めます。

 映画を観て、政府と日本が世界の科学者と力を合わせれば、あるいは日米が合同で力をあわせれば、どんな艱難も解決できるという前向きなメッセージを受け取る人は幸せなのかもしれません。日本人は万能ですって。
 でも正直、私は、滅入ってしまった。いまの日本は地球を汚染し続けるメルトスルーという現実的な問題を抱えているのです。誰かはアンダーコントロールとウソついたけどね。福島の原発事故に比べれば、ゴジラは与しやすいのだと再認識してしまった。偉い人たち、どうか叡智をもって原発を制御してください。

 一般論として、創作物は(作者のテーマなどと無関係に)ロールシャッハテストみたいなものだから、個々の感想は自由です。右も左も武器オタクも庵野オタクもゴジラファンも自分なりの解釈と発見をしてたのしめばいい。私はがっかりした大団円で、カタルシスを得たひともたくさんいる。
 つまり、あれです。テレビで「日本人ってこんなにすごいんです」という番組や本がたくさんありますよね。あれは何かのプロパガンダですか? 私は自画自賛が気持ち悪いんですが、みんなが好きで視聴率が高いからどんどん増えるのでしょう。『シン・ゴジラ』は日本礼賛映画、つまり国策映画に見えて警戒してしまいます。そういや、「アンダーコントロール」と言った人も、なにかの会合で『シン・ゴジラ』に言及し、自衛官募集のポスターにもゴジラが登場していたそうですね。

 以下は、雑感。
◎この映画、皇居の話題は避けていました。
◎上記のとおり、ゴジラは夜がよく似合う。真っ昼間、電池切れして突っ立っているゴジラはどんなもんじゃろ?
◎最初出てきたとき、ゴジラは姿形が違います。初登場が第一か第二形態で、完成した姿は第四形態でしたっけ。ゴジラの幼少期はミニラだろ〜、と私は心のなかで叫んでいましたわ。
◎『忠臣蔵』と同時に進行するスピンオフ(?)が『四谷怪談』です。同じように、日本でゴジラ退治のため知恵と勇気をふるう『シン・ゴジラ』と、日本のゴジラを◎◎で撃退するべく必死に任務を遂行する『博士の異常な愛情』が同時進行していたら……と妄想したら、こりゃすごい映画だな。