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映画『ゴジラ』(1954)

ゴジラ(昭和29年度作品)【60周年記念版】 [Blu-ray]

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『ゴジラ』第一作(1954、東宝、本多猪四郎監督)をCATVでやっていたので、録画して見直しました。出演は、宝田明、河内桃子、平田昭彦、志村喬、堺左千夫ら。
 海底に生息していた古代生物が水爆実験の影響により地上に出現し、東京を焼き尽くします。
 作品で地上を守るのは「防衛隊」でしたが、警察予備隊が保安隊を経て自衛隊に編成されたのは、映画が公開された昭和29年。朝鮮戦争は休戦しましたが、米ソのにらみ合いが続き、世界情勢は安定しません。日本には第二次大戦の記憶が色濃く残っています。映画では(引用不正確ですが)、電車に乗っていた女性が「せっかく長崎の原爆を運良く逃れたのに」とぼやいたり、銀座でゴジラに襲来された母親が子供を抱いて「もうすぐおとうちゃんのところに行けるよ」と叫んだりします。ゴジラが通り過ぎた東京をみた当時の観客は東京大空襲を想起したでしょう。病院はベッドが足りず、野戦病院のようです。
『ゴジラ』にあって『シン・ゴジラ』にない大きなものは庶民の切実な悲哀です。後者のゴジラは、一見、福島第一原発のメタファーとして出現するものの、「人間の技術が生み出した怪獣」という意味づけは稀薄で、原発に近い町から避難せざるをえなかった人たちの悲しみはまったく反映されません。
『ゴジラ』では大量破壊兵器を造ってしまう科学者の葛藤が描かれ、命に代えて怪獣を殺そうとします。『シン・ゴジラ』は知恵と勇敢な行動力で(スケールは大きいけど)害獣を駆除します。ある意味、政府と科学と自衛隊の広報になるような映画ですが、一方、莫大な時間と人材と費用をかけても収束できない原発事故のほうがゴジラより怖いという事実が際立ち、私はゲンナリしました。
 東京を徹底的に焼尽するという点では『シン・ゴジラ』も引けをとりません。しかし現像のよくないモノクロ映画のほうに迫力を感じるのはなぜでしょうか。人々が焼かれる映像がはさまれることで、絶望感が生じるからか、あるいはモノクロのほうが想像力が働くのか……(青空の下のゴジラってなんか変だよね)。
 ともかく、あらためて『ゴジラ』は良いパニック映画だと感じました。意味不明なところもあります(たとえば山根博士はなぜゴジラが光を嫌うと言ったのか?)が、それを考慮しても悪くない作品です。
      ☆
 以下、今回気づいたこと。
 志村喬演じる山根博士が大戸島の坂道を駈け上がるシーン、思ったよりも機敏で、一瞬、『七人の侍』の勘兵衞とダブります。それもそのはず、『七人の侍』も同じ昭和29年公開なのでした。
 志村は当時49歳。山根博士は老人というイメージでしたが、妙齢の娘がいることから実年齢はほぼ同じなのかもしれません。ちなみに、志村が定年(当時は55歳かな)間際の役人を演じた『生きる』はその2年前でした。むかしの人の年はわからん。
 ちなみにキネ旬ベストテンを見ると、1位と2位を木下恵介監督の松竹映画『二十四の瞳』『女の園』が占め、『七人の侍』は3位。『ゴジラ』は無得点です。興行収入も『七人の侍』が3位で『ゴジラ』は8位。トップは『君の名は・第三部』でした。
 評価も興行収入も、松竹が東宝を抑えていたんですね。