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本『スウェーデンの小学校社会科の教科書を読む』

 最近読んだ本、第2弾は、『スウェーデンの小学校社会科の教科書を読む』。
『久米宏のラジオなんですけど』に、訳者の鈴木賢志さんがゲスト出演して興味を持ちました。
 いやはや、すごい内容です。
 日本の教科書ならば、憲法や法律について書かれていたら、「法律は守るものです」なんてことが書かれるのでしょう。テストでは「国民の三大義務とは何か?」なんて聞かれるのです。
 しかし、スウェーデンの教科書は違います。
 終始、法律、規則、規範は変えられるのだ、と書かれています。
 たとえぱ学校が髪型や服装に決まりをつくっていて、それを不当な人権侵害だと感じたとする。そしたら反抗して変えさせちゃえ。
「髪型やファッションを変えて規範を打ち破ってやろうとするなら、それを何度も繰り返しているうちに、それでいいのではないかと思われるようになるかもしれません」(第1章「社会」)。
 日本じゃ、子供が大人に反抗するなんて考えられませんが、あちらの国では、子供の人格も1人の社会人として尊重されているのです。
 第2章は「メディア」。
 スウェーデンは進んでるからメディアリテラシーを教えているんだろう、と予想しましたが(それについても言及されますが)、もっとレベルの高いことから始まっていました。FacebookやTwitterを通じて発信者になることの重要性です。
 びっくり仰天。対象年齢は日本の小学校高学年ですよ。
 あなた自身も社会に影響を与えることができるのだ、とスウェーデンの教科書には書かれています。そして、あなたが世論を形成してオピニオンリーダーになる方法は、新聞への投書、SNSの活用、人を集めてデモをすること、政治家に直接訴えることなど、とあるのです。
 スウェーデンの教科書にいちいち感動した私は、第5章「政治」で語られる、なぜ勉強しなきゃいけないかという一文に打ちのめされます。
《(略)学校の職員や両親、近所の人々、コーチ、そして最終的に政治家を味方につけるためには、誤字などの誤りがなく、正しく書くことが重要となります。あなたが、しっかりと準備が整っており、ちゃんとした文章が書け、そして自分の意見を冷静にしっかりと伝えることができるということを示しましょう》
 参りました。
「同性愛者のお父さんに育てられている子供もいます」なんて記述もあります。「隠れた広告」に注意しよう、などともあります。多様性を認め、徹底的に民主制であり、子供の人格を認めているのです。
 子供のころからこういう教育を受けているから、スウェーデンの政治に対する意識は高く、十代半ばからどこかに入党したりするし、投票率も高いのだそうです。日本の家庭では、親子同士でもどこに投票したか内緒にしたりするといいますね。
        ★
 民主主義国家を標榜するからには、それを理解しようとしなきゃいけない。しかし日本の国民は自分たちが主権者であることを自認せず、自民党・公明党の大半は立憲主義さえ理解できない。
 入って来た宗教が土着の信仰と結びついて変容する例は世界中にあります。同じことで、日本では輸入された概念・民主主義と近世から続く上意下達の階層意識が渾然として、「一見民主主義風ただの階層社会」になっているのです。自称保守の連中は、男性中心のカースト社会がお好きなようですが、それと民主主義は本来相容れないのだから、戦前回帰なんていうのは改革と同じなのです。自称保守なのに改革とはこれいかに?
 スウェーデンの教科書は、若者のデモを見て「子供のくせにえらそうなこと言うな、おめえら就職がなくなるぞ、キーッ」と言っていた日本の大人や、黒人・LGBT・事実婚・沖縄その他マイノリティを差別する政治家が読むべき本です。

スウェーデンの小学校社会科の教科書を読む: 日本の大学生は何を感じたのか

スウェーデンの小学校社会科の教科書を読む: 日本の大学生は何を感じたのか

  • 作者: ヨーランスバネリッド,G¨oran Svanelid,鈴木賢志,明治大学国際日本学部鈴木ゼミ
  • 出版社/メーカー: 新評論
  • 発売日: 2016/12/09
  • メディア: 単行本
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