盛川和洋の装丁の仕事

盛川和洋の仕事の紹介

アートディレクション第1号

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初めてアートディレクションの話です(本そのものがいま見当たらないので、昔あるところに載せた画像です)。

1997年、私は編集者でした。頂戴してきた文庫書き下ろしの原稿は、抜群に面白い歴史伝奇小説だったんです。ところが千枚以上の大作で、どう売るか頭を悩ませました。二分冊ではなく、一冊で行こうと会議で決まりました。

当時、光文社の時代小説文庫は上に横長にベタを敷いてタイトルと著者名を横書きにし、イラストはその下に四角く入ると決まっていました。しかしこの本は、タイトルスペースを半分無視。大きくイラストを描いていただきました。帯の用紙も通常とは違うトレーシングペーパー。背には特大のタイトルを薄く入れて分厚さを強調しています。

当時はまだデジタル入稿をする勇気がなく、パソコン上でつくったデータと指定を書き、ほかの方に正式な版下にしてもらいました。

今考えたら編集部の下っ端がわがまま放題やっていますが、おかげさまで何度も重版がかかりました。思い出深い本です。